ナガの短く映画を語りたい

改まった解説や考察をするつもりはありません。とにかく適当に映画語りしていきます。

【ワンシーン批評】『たまこラブストーリー』:青春の苦みを味わう(ネタバレなし)

 

はじめに

 

 みなさんこんにちは。ナガです。

 

 今回も私のオールタイムベスト映画トップ10映画から1作品をチョイスして短評を加えていこうと思います。この記事でオールタイムベストを紹介するのも7作品目でかなり佳境に差し掛かっております。

 

 本記事で紹介する作品は『たまこラブストーリー』です。鑑賞して以来、私の中ではアニメ映画の最高峰で在り続ける本作品は今や『聲の形』や『リズと青い鳥』でも高い評価を獲得している山田尚子監督の作品です。

 

 そんな山田尚子監督の最高傑作たる『たまこラブストーリー』から今回は1シーンだけを抽出して、それについて語っていこうと思います。

 

作品情報

 

タイトル:たまこラブストーリー

企画・原作:京都アニメーション
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督堀口悠紀子
絵コンテ:山田尚子
演出:山田尚子、小川太一、河浪栄作、山村卓也
作画監督堀口悠紀子、丸木宣明、引山佳代
美術監督:田峰育子
色彩設計:竹田明代
撮影監督:山本倫
設定:秋竹斉一
音響監督:鶴岡陽太
音楽:片岡知子マニュアル・オブ・エラーズ
音楽プロデューサー:中村伸一、山口優
録音:名倉靖
音響効果:神保大介
編集:重村建吾
アニメーション制作:京都アニメーション
配給 - 松竹

 

今回のワンシーン

 

青春とは時に甘く、時に酸っぱく、そして時に苦い。

甘酸っぱい青春は誰もが経験したいと望むが、苦い青春はその限りではない。

しかし、その苦みを味わった者だけが手にすることのできる未来がある。

砂糖を入れないというただそれだけの選択が人生の大きな決断なのだ。

 

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批評:青春の苦みを味わう

 

 昨今甘酸っぱい青春を描いた恋愛映画がしばしば映画館で公開され、若い世代の関心を集めています。劇場で憧れのまなざしをスクリーンに向ける彼らはそんな青春に自分の理想を投影しているのでしょうか。

 しかし、現実はそう"甘く"ない。青春とは甘酸っぱいものというよりももっと苦みを孕んだものです。だからこそ誰しも"苦み"とは距離を置いた青春を過ごしたいと、恋愛映画が魅せる甘酸っぱい幻想に自己を逃避させたくなるのでしょうか。

 確かに"苦み"を味わうことなく、青春時代を終えることは可能だと思います。何も決断せず、何も行動を起こさず、ただ流されるままに生きていれば自然とそうなることでしょう。ただひとたび自分の意志を表出させたならば、そこには必ず"苦み"が伴うことでしょう。

 

 コーヒーに何気なく入れていた角砂糖。苦く黒い液体に溶け出すと中毒性のある甘みを発します。その味は優しく、マイルドでいつまでも浸っていたいと思ってしまいます。それでもその"甘み"を排して、コーヒーが本来有している"苦み"を味わおうとしたならば、それはもう青春における大きな決断なのです。

 

「後悔の苦さは、何かをした証。1つ1つ味わいになる。」

 

 何かを決断するということは、それに伴う"苦さ"を味わうということです。それでも「今少し震える手で」それを選び取ることが出来たならば、きっと前に進めます。

 

 このシーンは幼馴染のたまこに告白をしたもち蔵が商店街の喫茶店でコーヒーを飲んでいるシーンです。もち蔵が選び取った幼馴染の関係を恋愛関係に発展させるという決断はすごくリスクが大きく、失うものも大きいものです。しかしその決断が無ければ、おそらく一生手に入れることが出来ないものでもあります。勇気を出して苦いコーヒーをまだ未熟な身体に流し込み、そして前に進む。等身大で、繊細で、それでも熱のこもった1人の少年の決断に勇気をもらえるシーンでもあります。

 

 『たまこラブストーリー』という青春映画の、恋愛映画の金字塔が教えてくれるのは人生を生きるうえでとても大切な言葉でした。

 

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