ナガの短く映画を語りたい

改まった解説や考察をするつもりはありません。とにかく適当に映画語りしていきます。

【ワンシーン批評】『孤狼の血』:ショートピースとハイライト(ネタバレなし)

 はじめに

 

 みなさんこんにちは。ナガです。

 

 今回はですね映画『孤狼の血』についてお話しようと思います。このサブブログではできるだけ旧作をメインに扱っていこうという方針なのですが、どうしてもこの作品については語っておきたいことがあったので取り上げました。

 

 メインブログで「映画にバイオレンス描写は必要なのか?」というテーマで記事を書いておりますので、良かったら読んでみてください。

 

www.club-typhoon.com

 

 こちらのブログでは映画『孤狼の血』からワンシーンをチョイスして語っていこうと思います。

 

 良かったら最後までお付き合いください。

 

作品情報

 

題名:孤狼の血
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作:柚月裕子「孤狼の血
製作:天野和人
出演者:役所広司/松坂桃李

音楽:安川午朗
撮影:灰原隆裕
編集:加藤ひとみ
制作会社:東映東京撮影所
製作会社:「孤狼の血」製作委員会
配給:東映
公開:2018年5月12日
上映時間:125分
製作国:日本
言語:日本語

 

今回のワンシーン

 

たばこの銘柄は1つの勲章。

そしてたばこの銘柄はその人の人間性をも表現すると言われる。

ヤクザ映画に出てくるタバコはクールだ。

これだけ世間が嫌煙・分煙・禁煙、そして電子たばこといった健康志向へ傾倒しようとやっぱり紙巻きたばこはクールなのだ。

 

f:id:bluemoon-city-118:20180514194449p:plain

 (C)2018「孤狼の血」製作委員会

 

批評:ショートピースとハイライト

 

ショートピース

 タール:28mg

 ニコチン:2.3mg

 

ハイライト

 タール:17mg

 ニコチン:1.4mg

 

 ショートピースと言えば東映ヤクザ映画、実録映画でもしばしば登場する紙巻きたばこです。やはりヤクザ映画と言えばこのショートピースとパーラメントのイメージが強いです。

 実は本作の主人公である大上は原作ではショートピースを吸っているんです。ヘビースモーカーで常にタバコを吸っていて、部下の日岡はたびたび口にたばこを咥えたら火をつけろと叱責されています。作品の中盤でタバコ屋のおばちゃんにキャスターマイルドをおまけだと言われて渡されますが、彼はそんなマイルドなタバコには鞍替えする素振りはありません。

 

キャスターマイルド(廃盤)

 タール:5mg

 ニコチン:0.4mg

 

 原作の大上がショートピースを吸っているのは、原作者の柚月さんが東映のヤクザ映画や実録映画シリーズの大ファンだということから考えると納得がいきます。フィルターが存在しない両切りのショートピースは数あるたばこの銘柄の中でもトップクラスの重たさです。このタバコを吸っているだけで、一目置かれるようなそれくらいの存在感があります。

 ただ映画版を見てみると、大神が吸っているのはハイライトなんですね。たばこの中では比較的重たい部類に入るものではありますが、原作のショートピースと比べるとはるかに可愛いたばこです。原作でたびたび、「煙草」ではなく「ショートピース」を表記されているのですから、柚月さんは間違いなく意図的に大上のたばこの銘柄を指定していますよね。それを変更したということは何らかの意図があったと考えてよいのではないでしょうか。

 

 ショートピースというタバコは特に東映全盛期のヤクザ映画の臭いが染みついたタバコの1つです。そう考えると大上というキャラクターにショートピースを吸わせるのはいささか違和感がありますよね。彼はあくまでも警察ですから。

 しかし警察の中でも一目置かれ、特異な存在である大上がライトなタバコを吸っている姿も想像できません。ただセブンスターは似合わないです。

 

セブンスター

 タール:14mg

 ニコチン:1.2mg

 

 セブンスターって今やヤンキー、DQNのイメージが染みついてしまってるんですよね。たばこの中では比較的重い方なんですが、やっぱり映画『クローズZERO』なんかでも大半のキャラクターがセブンスターを吸っているという有り様でした。ですので、セブンスターを吸っていると、大上というキャラクターが軽く見えてしまいます。

 そう考えるとヤクザと警察どちらにも転ばないように綱渡りをしている大上というキャラクターを表すのにハイライトというタバコってピッタリじゃないですか?ライトで軽いたばこでもなく、ショートピースほど重たくヤクザの臭いが染みついているわけでもない丁度中間に位置するタバコなんですよね。

 

 そしてもう1つかなりこじつけですが、『仁義なき戦い』で菅原文太が今は無き「光」という銘柄の煙草を取り出す名シーンがあるんですよね。

 

 

 「光」・・・ライト・・・「ハイライト」・・・。何か不思議な繋がりを感じませんか??「ハイライト」というタバコが大上から日岡へ引き継がれていくシーンと言うのはもしかすると『仁義なき戦い』というかつての東映の暴力映画栄光の時代の象徴たる作品からのバトンを彼が引き継いだという意味合いがあるのかななんて思いました。

 かなり妄想が入ってます(笑)

 

 タバコってまあちょっとしたモチーフではあるのですが、注目して見ると意外と面白いと思います。

 

 今回も読んでくださった方ありがとうございました。

 

商品リンク

・『孤狼の血』原作

 

孤狼の血 (角川文庫)

孤狼の血 (角川文庫)

 

 

・『仁義なき戦い

 

仁義なき戦い

仁義なき戦い