ナガの短く映画を語りたい

改まった解説や考察をするつもりはありません。とにかく適当に映画語りしていきます。

【ワンシーン批評】『ゼアウィルビーブラッド』:私はお前のミルクシェイクを飲むのだ。(ネタバレなし)

 

はじめに

 

 みなさんこんにちは。ナガです。

 

 今回はですねいよいよ最新作『ファントムスレッド』の公開が間近に迫っているポールトーマスアンダーソン監督の作品について語っていこうと思います。既にこのブログでは『ザ・マスター』という作品について紹介しております。

 

bluemoon-city.hatenablog.com

 

 そして今回紹介する作品は彼の代表作とも言える『ゼアウィルビーブラッド』という作品です。アプトン・シンクレアの『石油!』という小説を原作にして作られた本作は彼の作品の中でも特に高い評価を獲得していますね。

 

 このタイミングでこの作品を紹介するのには、深い訳があります。というのも『ファントムスレッド』の主演を務めるのは本作でも主演を務めたダニエル・デイ=ルイスなんですね。これが1つ目の関連です。

 そしてもう1つ私は『ゼアウィルビーブラッド』と『ザマスター』そして『ファントムスレッド』の3作品を総称してポールトーマスアンダーソン支配3部作と呼びたいと思っております。この3作品は全て「支配」という言葉が1つの重大なテーマになっていますからね。

 

 さらに今回チョイスしたワンシーンも実は『ファントムスレッド』に非常に通じるところの多いシーンです。そのためここはぜひ1人でも多くの方に『ゼアウィルビーブラッド』を見て欲しいと思い、書いております。

 

作品情報

 

邦題:ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
原題:There Will Be Blood
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:アプトン・シンクレア『石油!』
製作:ジョアン・セアラー/ポール・トーマス・アンダーソン/ダニエル・ルピ
製作総指揮:スコット・ルーディン/エリック・シュローサー
出演者:ダニエル・デイ=ルイス/ポール・ダノ
音楽:ジョニー・グリーンウッド
撮影:ロバート・エルスウィット
編集:ディラン・ティチェナー
製作会社:パラマウント・ヴァンテージ/ミラマックス
配給:ミラマックス/ディズニー
公開:2007年12月26日
上映時間:158分
製作国:アメリカ合衆国
言語:英語

 

今回のワンシーン

 

貧乏人は金持ちにたかる。

いつからかそんな認識が普遍のものとなりつつある。

しかし果たしてそれは本当なのだろうか?

深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだとはよく言ったものだ。

貧乏人が金持ちから甘い蜜を吸おうとする時、金持ちもまた貧乏人から蜜を吸い取るのだ。

 

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批評:私はお前のミルクシェイクを飲むのだ。

 

 「アイ・ドリンク・ユア・ミルクシェイク」は、本作『ゼアウィルビーブラッド』を見ていなくとも映画ファンであれば、1度は聞いたことがあるのではないかというくらいに有名なセリフですよね。

 ただおそらくこのセリフがどんな意味で使われていたのかという話になると知らない人の方が大半なのではないでしょうか?ミルクシェイクというのは別に「精液」の隠語とかではありませんよ?(笑)

 

 裕福な人に小蝿のようにたかる貧乏人という構図は現実でも映画でもしばしば見る構図です。貧乏人はあの手この手を尽くして富を持つものからその財産をかすめ取ろうと試みます。つまり貧乏人は裕福な人間がたんまりと抱え込んでいるミルクシェイクを何とかして吸い取ろうとするんです。

 

 しかしそれでは物事を一方の側面からしか捉えられていません。視点を変えてみると、裕福な人間は貧乏人がわずかしか持っていないそのミルクシェイクを搾取しようとしているんですよ。

 「カイジ」に登場する地下の強制労働施設なんかを思い出していただくとイメージが湧きやすいでしょうか?裕福な人間は自分がたんまりとミルクシェイクを保有していたところで、自分のそれを飲もうとはせず、貧乏人が持っているなけなしのそれをその人が干からびて涸れるまで吸い取り続けるのです。

 

 主人公で石油王のダニエル・プレインヴューは宣教師のイーライに告げます。「お前は自分がたかる側だと自負していたのかもしれないが、それは全くの逆だ。搾取していたのは俺の方なのだ。」と。

 

 「俺はお前のミルクシェイクを飲むのだ。」

 

 欲望はどんな人の中にも確かに存在しています。それは経済的に満たされようが、満たされていまいが等しく内に秘められています。誰もが他人から甘いミルクシェイクを吸い取ろうとし、誰しもが気がつかない内に自分のミルクシェイクを吸い取られています。そんな血みどろのカオスが我々、人間の社会には広がっているのです。

 

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